青焔会報 2007年4月号

 
   
左脳  
米山郁生
 
   

明日は10時から講演。講演先まで約50分。

その前に調べる事、揃えなければならない資料がある。その準備がどれ位の時間を要するのか、考える間ももたない程の睡魔におそわれる。

平均睡眠時間が3時間程、それが50年、齢も重なってきたのだから致し方無い。2時間程寝たであろうか6時起床、必要な資料を揃えて出かけるのにピッタリの時間。そんな事が数々ある。意識して時間を調整、物事を進めるのではなく、脳が自動的にスケジュールのコントロールをする。偶然ではない証しにそうした事を度々体験する。この忙しさでも予定表を記入した手帳は持ち歩かない。時々大切な予定を忘れている事もあるが、その予定に対し準備の時間の余裕をもって思い出す事も数々ある。

脳の中にスケジュールが組み込まれてある、それに必要な時間も。自分では予測しなくても脳が自動的に考えそれを調整している。

仕事の量が多い為、3週間毎に自分がしなければならない作業、事柄を書き出し一覧表にする。常に30〜40項目位が書き出される。電話一本で事が済む事もあれば、2〜3ヶ月、長いものでは半年程時間をかけ会議を何度も重ねて継続してゆくプログラムもある。どれだけ消化しても次から次へと湧いて出てくる。それをどう能率良くこなしてゆくのか、普通では不可能な仕事量をチャレンジしてゆく、それも楽しみの一つである。

これには私なりの一つの方策がある。まず一覧表に眼を通し、各々にどれ程の処理時間がかかるのか予測する、次に時間のかかり具合によって4つ程に分類する。その時分類された項目の中で関連した事柄を記憶しておく。最も時間をかけ検討を重ねなければならない事柄の大まかな概要をつかみ頭に入れる。それが何項目あっても総ての要件をチェックする。それらをA群としよう。その後で〆切り期日の迫った作業に入る、これをB群。B群を進める中で少し疲れると、頭の切り替えの為短時間、簡単に出来るC群を対処。同じ様な仕事であってもその内容、対象が変わると効率は上がる。交互に作業しながら〆切りの迫った項目は着実に完了していく。関連した業務は電波の交信のようにその都度処置する。そして少し時間のかかるD群へ。

不可思議かつ愉快なのはA群、思案、模索、検討を重ねなければならない案件であるが、何も時間をかけて考えていないのだが他の事を進めている間に脳が自然に働いてその内容を検討してくれているのである。車の運転中、食事、様々な作業をしながら、睡眠中でさえその事柄は無意識の内に検討されているのだ。40件もある要件の中で最初に一番難しい問題に取り組んでしまっては他の総ての案件は未処理となる。

学生が短い試験時間の内にいかに問題を回答してゆくか、判るものから回答してゆくのは当然だが、最初に難しい問題の概要を読み取っておく、他の答えを出している間に脳が機敏に働いて解き明かしてくれるであろう。その為には普段から様々な情報に関心を持ち、知識だけでなく絵や音楽等感性も豊かにしておかなくてはなるまい。

左脳は知的な活動を、右脳は直感的な働きをする。物事を知り、考える事は基本的に大切だ。学校で教えられた事をしっかりと答える、それが成績となり学歴主義が成り立つ、しかしそれは人間の一面でしかあるまい。社会に出るといかに創造力が必要かが求められる。人に言われた事を言われた様にしか出来ない人は一つの限られた部署から離れられまい。独創的、総合的、複合的発想が物事を展開してゆく重要な鍵となる。

アメリカ同時テロの際、ある日本企業で働いていた外国人は事件直後その場から逃れる行動に出たが、日本人の多くが日本に電話してどうするべきか指示を伺っていたと現地日本人が話されていたと聞く。

子供の教育に関し一部始終あれこれ注意をし過ぎると、指示が無ければ何も出来ない人間を創る。絵を描く時にも、子供の横で同じ様な行為をしていたら、算数をしているのと同じ。絵を描くという右脳の活性化の意味が無い。又、子供の前でしっかり座り込んで見ている事も無言の重圧、同じ事なのだ。

絵を描く事は創造力を豊かにする、それも描き方によるのだろう。ぬり絵や、色、形に追随ばかりしていては効果は同じ。心の中の絵にしたいという欲求、構想や感情空間をいかに画面に表出するか、不可能なものを可能にし新しい発想をいかに現実にしてゆくか、未知の空間をいかに二次元の空間に捉えてゆくか。その相反する両者の葛藤の中に始めて絵を描く意味が出てくる。

想像し思考、進化する脳の働きを自我の意識の中で単なる記憶装置にしてしまうのでなく、無意識の中で無限に広がってゆく感覚を傍受する力を高めたい。それがより健全な子供達を育てる力となるであろう。

いじめ等、様々な事件、問題もそれを防御する方法論では手遅れ。生命誕生、おなかの中からの胎教と、小学低学年迄の育て方、そして、それ以前の遺伝子、親の考え方、生き方が大切なのだ。

 
   
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