青焔会報 2002年12月号  
   
 
米山郁生
 
   

 ええ、まあ、なんとか。そのうちに、適当に...。○○と思われます。まあまあですね。○○だと思います。そんな感じですね。あっ、そう、ねえ。そこらへんにしといて。会話の中にクッションを入れる。時にはそれが場をやわらげ、場の雰囲気を作って調和をとる事もある。がしかし、それが事の本質を外し物事をあいまいにする事になりはしないか、現在の日本にはあまりにもそうした事が多過ぎる。

 11月2日 沖縄で米軍海兵隊少佐による女性暴行未遂事件が起きた。沖縄県警が逮捕状をとり、起訴前に身柄を引き渡す様求めたが米政府は拒否した。外務省はそれに対し極めて残念だが、米側の回答は真摯に検討した結果であり再要請はしないと報道されている。日米地位協定では殺人や強姦という凶悪な犯罪は起訴前の引き渡し要求に対し“好意的考慮を払う”としており、それははっきりとした約束事ではなく、米国の思いのままに、どうぞどうぞ適当に判断して下さい、という事になる。

 韓国で在韓米軍の装甲車が女子中学生二人をひいて死亡させた。その事故の米兵に無罪判決。韓国各地で米韓地位協定の改定や無罪評決の無効、ブッシュ大統領の謝罪等を要求してソウルでは一万人規模の抗議集会、他各地で抗議集会が開催され荒れた。日本では、そんな事件があっても、この4日、今月中旬にイージス艦を米軍のイラク攻撃、間接支援の為にインド洋に派遣する事を決定等とねぼけた事を言っている。

 政府与党に緊張感が無いのは野党に力が無いからだ。民主党は野党第一党に安住しているが、政治、経済の状況はそれどころではない、自民党が党内で与党、野党の役割を演じている為野党はカヤの外、先日民主党党首が自爆テロをやった、しかし焦点がボケている為、効果はゼロ。まるで鳩が豆鉄砲を撃って、ではなく、打ってそれが暴発、自分から倒れてしまった様なものだ。これは本人自身の問題もあるが、代表選挙を終えてわずか二ヶ月半、なぜそうなったのか、そうしなければならなかったのか、周囲の人達の無責任さもありはしないか。道路公団民営化についてその推進委員会が分裂、委員長が辞任、異常な事態を報道され、各方面から批判された。しかし当初委員を選出した時点で各々の委員がどの様な考え方を持っているかは明白な事、各々が真剣に議論すれば紛糾しても構うまい。結果の見えた形式だけのお手盛委員会を造るより、揉めれば揉める程、事の核心に迫る事になる。最後に感情論になったかも知れないが、それはそれ、健闘を称えたい。

 拉致問題が暗礁に乗り上げて埒があかない。この事件程多くの問題を含んでいるものはない。拉致された人はこの人達だけではないであろう事、五人が北朝鮮に帰らないとしているが、子供達や夫はどうするのか、日本の生活が充分満足出来れば出来る程、子供達に対する思いは募るはずである。事の発端は日朝交渉の際、一週間ないし二週間の帰国の約束で日本に帰ったのであり、拉致されたのであるから帰る必要は無いという論理は当てはまらない、なぜ一、二週間等という約束の中で事を進めたのか。子供達に何かが起こった時、どう弁明するのか。拉致された方々が政府を信用するという思いは希望的観測であり、子を思う心はそれ程冷静な事ではないと思う。又、日本が過去の植民地支配の謝罪、補償、清算等を明確にしてはあるまい。北朝鮮にはその事実が明確に根底にあるのであろう。拉致問題は五人の方々の保護で解決はしない、八人の死亡もあいまいなままであり、他にもっと多くの方の拉致がかくされている。交渉は見えない部分を予測してそこに焦点を当て、見えている部分以上のものを掘り起こして成功するのであり、見えたものを見えたままで対処していては得るものは少ない。

 絵を描く時、適当に、なんとなく、これ位でというあいまいな考え方でいい絵は描けない。よく見て、よく考え、努力して、最後迄あきらめない。誰でもが、ごく自然に出来る事柄の中に感動する境地が開かれているのである。

 言葉も、行動も、思考も、精神も、総て一体となっているのである。

 
   
青焔会報 一覧に戻る
 
   
絵画教室 愛知県名古屋市内外 青焔美術研究所 トップページ