青焔会報 2002年1月号  
   
青焔福祉会  
米山郁生
 
   

 昨年暮れに「先生、福祉の為に役立てて下さい」と匿名希望で複数の方から心のこもったお金を預った。青焔展を毎年見られ、会報をお送りしている知人から「今年は寄附は募集しないのですか」と電話があった。有り難い申し出、しかし貧乏人の私がお金を持つと飲んでしまうとまずい!お金は心を汚しやすい、領収証を出せるシステムを作りたいと思った。

 作秋、障害を持った人達の絵画展“フロール展”が開催された。開催後展覧会に関してのシンポジウムが開かれた。その中で施設の方々が障害を持った人達が施設を出た後、絵を見て下さる所が無いと発言。主催者が愛知県では唯一、グループ青焔が受け入れて下さいますと回答していた。障害を持った方々が青焔に入会する時、他の所では皆断られるので、と言われていた。現在、青焔には障害を持った方は約50名。彼らが社会に出てからの何か良い方法はないかと常々考えている。会報9月号に紹介した“なごや職業訓練校”もその一つだが。捨てるにもお金のかかる古本を集荷、障害者の働ける古本屋は一石二鳥!だと思案。

 青焔の為なら命を捨ててもいいです、と物騒な事を言う、今は健康な若者が居る。

 各分野で活躍している青焔OBから便りが続く。

 会報3月号で紹介した 山田 達也氏から、千と千尋の神隠し、となりのトトロ等の作者 宮崎 駿氏のアトリエを設計、他にも度々仕事を任せられていたが所属する会社が倒産、かねて念願のヨーロッパでの建築の勉強に出かけた。ロンドンに滞在中、突然 宮崎 駿氏の長男 ジブリ美術館の館長 五朗氏より電話、ジブリ美術館のスタッフの為のアトリエを建設したい、宮崎 駿氏がどうしても山田君に仕事を任せたい、急拠連れ戻してくれと指示。他にも自選、他薦、宮崎 駿に関わりたいと志願する人が多いであろうに、本人からの直接の依頼となった。思えば15年程前、青焔の会員であった頃「先生といっしょに仕事をしたい」と申し出たのを「山田君、君の人柄なら絶対成功する。学生の頃取った一級建築士の資格を生かす為、東京に出て頑張れ」と奨めた。「いつか先生の美術館を建てていっしょに仕事をする」とヨーロッパに勉強に出た後東京に向った。彼の活躍を称えても「先生に人間の生き方を教えてもらったから」と言う彼の謙虚さが宮崎 駿の心を捉えたのだろう。

 12月1日、電気文化会館コンサートホールで、次代を担う若きアーティストたちを応援するテレビ愛知主催のリサイタルがあった。ピアノの吉次 舞と競演、安井 正規君が電子オルガンを演奏、満席の聴衆の喝采をあびた。たった一人の電子オルガンの演奏がまるでオーケストラを率いている様に華麗な舞台であった。挨拶する安井君の姿が13年程前中川教室で絵を習っていた少年の姿にダブっていった。学生になり進路に迷っていた頃、母親に「一度しかない人生、本人の進みたい方向を是非」と奨めた。その中で彼自身が自らを築いた。様々なコンクールで受賞、TV番組の“世界遺産”“スーパーサッカー”などのBGMを担当する等の活躍。演奏終了後多くのファンに取り囲まれていた彼が大声で私を呼び止めた笑顔、何度も何度も送られてきた母親の礼状。

 5才の頃から中学1年の今まで、殆ど休まず知立から通い続けた石黒 裕規君。小学校1年の頃学校の先生との交換日記の中で「僕は耳が聞こえない。だから発音がしっかりしないので友達からいじめられる。先生は僕がいじめられている事を知っていないだろう。それは先生が心の眼で僕を見ていないからだ。もっと心の眼で見てくれ」という文を書いていたのを記憶する。一昨年、小学生作文コンクールで文部大臣奨励賞を受賞。昨年12月号で紹介した全国中学生人権作文コンテストでは、全国751034人の中から第一位内閣総理大臣賞。「先生、僕が学校卒業しても仕事が無かったら、ここの仕事を僕が手伝ってやるから」と私に指示?。が、心配無用。彼の前途は明るい。他にも多くのOBの人達が活躍の様子を見せてくれる。

 青焔は一つの家族だ。青焔としての人の和があってその温かみの中で皆大きく成長してゆく。この人の和を生かす為に青焔福祉会を発足させたい。一人一人の喜びを皆のものとし、皆の和を一人一人の力として生きる。誰もがお互いの為に力を尽くし、しかし決して強要しない。自由で豊かでお互いを思いやる、そうした連体を造り上げたい。今年青焔展は第30回。その30周年を記念して私達の生きる意味を確かにする方策を立てたい。
 近年技術革新の波はゆるやかな精神の歩みを止め、競争社会の必然性が人と人との対話を、人と器機との対峙に変え、結果個人主義を助長している現代の社会は、必ず不平等を進め、富と貧困の差を限り無く大きくする。今こそ私達は私達の眼に見える中から人間関係を豊かにするのだ。その事が全ての地域で全う出来れば、ゆるぎない社会、人間関係を造るのだ。今年、私達は青焔福祉会を発足する。"僕も参加したい“OB諸氏の声。総ゆる可能性を探って、

 お互いがお互いの心を豊かにする事が出来る為の。

 
   
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